今日もはっと息を飲む帽子ストーリーを探して。ハットスタイル編集長の松はじめです。
シルクハットというと、パッと思い浮かぶのは山の高い四角い帽子かもしれません。
この帽子はシルクでできているためそう呼ばれますが、もともとはビーバーの毛皮を使った帽子でした。
そこで名前もビーバーハイハットという名前で呼ばれ、ビーバーハイハットもシルクハットもどちらもトップハットという帽子の1つです。
1784年、ドイツのウォールドルフという小さな街に住んでいたジョンアスターは、一旗上げるべくアメリカに向かいます。後のアスター財閥ですが、ニューヨークに向かう船に乗った時に、当たるであろうビジネスを耳にします。
それは毛皮。
「アメリカ渡るんだったら、毛皮が儲かるらしい。」と聞いたアスターは、ビーバーに目をつけます。
水生動物で、アメリカにはたくさん生息していたのです。
帽子の材料にも最適なビーバー、これを独占できれば・・・
とはいえ、アメリカには先住民がいますので、命懸けです。勝手な真似をすれば死をも覚悟しなければなりません。
そこで、ウイスキーなどを提供し、うまく川の漁業権を手に入れたのでした。
どうして毛皮のニーズがあったのかというと、当時の洒落者は同じ帽子を翌年も被るなんて・・とたくさんの帽子を購入しました。一般庶民でも3つはトップハットを所持していた時代です。帽子は飛ぶように売れました。
だから素材のビーバーで大儲けできたのです。
ところが1830年、乱獲でビーバーがいなくなってしまいました。
こうしてシルクハットが生まれます。最初はベルベットの一種で、毛羽があって光沢のある素材で代用しました。
ところで、ビーバーというのは川に住んでいる水性動物なので、ビーバーの帽子も水に強い。
しかしシルクハットのシルクというのは水に弱い。
そこで、シルクハットは濡らしたくないので、傘を持ち歩くことにしました。これが英国人が傘を持ち歩くことになった理由なのです。
1930年ごろに、ウィンザー公がお出かけになられる時に、シルクではないハットを被っていました。
雨が降ってきたので、付き人は傘をさそうとしたのです。
なんと、「シルクハットじゃないのに傘をさすなんて、マナー違反だ!」と翌日の新聞で叩かれたのです。傘を刺して良いのはシルクハットの時なのですね。
それにしても、素敵な傘と帽子をセットで着こなせるようになりたいもの。ですが、私などどんな帽子でも濡らしてはなるまいと傘をさしてしまいそうです。
それなら松、いつもシルクハットにしたら良いじゃないか!というご意見ございましたらなるほどご尤もでございます、と私シャッポを脱ぐしかございません。
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