帽子の種類

 

数ある帽子の種類の中で、まず基本形となるのが中折れハットと呼ばれる帽子です。

中折れハットは、その名の通りクラウンの上が折れているタイプの帽子。この折れている部分はセンタークリースと呼びます。

これから初めて帽子をかぶろう、という場合に、この中折れハットから初めてみると良いというほど、帽子の基本形。

中折れハットは、クラウンやブリム(つば)の形状にはいろいろなタイプがあります。

意味は2つあって、広い意味では中折れ帽子全般のことをさします。もう一つは、帽子は大きく2つのカテゴリに分けられるのですが、ハード(硬い)ハットか、ソフト(柔らかい)ハットか。そのソフトハットを総称しても中折れ帽・中折れハットと呼びます。

なぜ真ん中にセンタークリースが入っているのでしょう?

中折れハットは、イタリアではロッビア(lobbia)と呼ばれます。

実はこの形状の帽子は、1864年、イタリアの代議士、ロッビアが労働争議の結果、ヒートアップした人々からステッキで殴られたことから生まれたという説があります。

頭をなぐられ、その時に帽子の中心が折れてしまいました。

ところが、ロッビアはその帽子をかぶり続けます。
「見よ!私はこんなにも本気で政治家をやっている!この帽子が物語っているではないか!」

へこんだ帽子を象徴のようにロッビアは堂々と歩き続けたといいます。

ホンブルグ

ホンブルグは、中折れハットの一種です。

ブリム(つば)がカーブしているのが特徴です。もともとのホンブルグはクラウンも高めでした。

ドイツのホンブルグにあった帽子工場が、英国皇太子(洒落者エドワード7世)を歓迎すべく献上した帽子と言われています。1894年、イギリスのカントリージェントルマンカタログ(通信販売)の中で、皇太子様がおかぶりになったホンブルグハット、10ポンド10シリング!というコピーが出ています。

当時の10ポンド10シリングは現代の20万くらいでしょうか、非常に高価だったと想像できます。ホンブルグはフランスではエデンと呼ばれ、英国の仕立て屋街サヴィルロウではイーデンという愛称で、イタリアでは中折れハットと同じくロッビアと呼ばれます。

ホンブルグハットが登場する前は、紳士といえばソフトハットではなく、ハードハットという固い帽子をかぶっていました。

素材はシルクでしたので、シルクハットと呼ばれ、ファッションもフロックコートという着丈の長い服を着ていました。

1881年ごろから、着丈が短い、今のスーツの原型と言われているラウンジコートにトレンドが変化したので、シルクハットではなくて、帽子も柔らかい物がトレンドになります。この時にちょうどホンブルグが登場して大ヒットしたという経緯があります。

1890年のアメリカのファッションカタログによると、ホンブルグにも、クラウンの高いトールホンブルグなどの種類もあったことがわかります。

ボーラーハット

ボーラーは、丸くて、固い帽子(ハードハット)です。

丸く固いので形作ることができないため、少し難易度が高い帽子です。かつては貴族に支える使用人がかぶっていた頑丈な帽子で、その後クロッケーなどのスポーツ用の帽子になり、1900年代にはスーツ用の帽子になりました。

現代ではニット製品などカジュアルなスタイルに合わせるコーディネートもあります。

ボーラーハットは、国によっても呼び方が変わります。

イギリスではボーラー、アメリカではダービー、フランスではメロン(メロンに似ているから)、ドイツではメローネ、イタリアではボンベッタ(小さな爆弾)と、いろいろな名前があり、日本では明治時代はボーラーと呼ばず、山高帽と呼ばれました。

そもそもどうしてボーラーという名前なのかというと、ウィリアムボーラーというハットメーカーがあって、ウィリアムボーラーで作られたので、ボーラーとなりました。

メーカーのウィリアムボーラーに帽子を作らせたのがロック帽子店で、依頼主はトーマスウィリアムコークという貴族。
そこで、ボーラーはコークという呼び名もあります。

ポークパイハット

ややスポーティなソフトハット。クラウンの頂上がほぼ平になっていて、中央がフラットにくぼんでいます。この様子がポークパイのようなので、ポークパイハットと呼ばれます。

またクラウンのへこみが望遠鏡のレンズに似ていることから、テレスコープとも呼ばれます。

パナマハット

パナマハットは、主に盛夏にかぶる帽子で、リネンのジャケットやサマーニットなどに良く合う、エクアドルで作られていたトキヤ草が原材料となっている帽子です。

パナマ運河のあるパナマ共和国に、ルーズベルト大統領が視察に来た時にかぶっていた事などからパナマハットと呼ばれたという説もありますが、パナマ運河経由でヨーロッパに入ってきた南国の帽子、ということでパナマハットと呼ばれるようになったとも言われています。

パナマハットはほぼ手作りで、トキヤ草を刈って煮沸して、干して手で編んで仕上げていきます。

パナマハットにはいろいろな形があり、中折れタイプのパナマハットもあれば、ポークパイ、またクラウンに1本の筋が入ったオプティモなど様々です。

パナマハットといえばブリーチのかかった白いハットのイメージですが、カラーバリエーションも豊富。

リネンのスーツやジャケット

ハンチング

ハンチングは、ハンチングベレー、ハンチングキャップ、ハンチング帽などいろいろと呼ばれる帽子です。

秋冬にはツイード、カシミア、ウールの様々なハンチングをツイード素材のジャケットや、ピーコートなどのカジュアルアイテムと合わせ、春夏にはリネン、ウール、コットンなどのハンチングを、ポロシャツやコットンジャケットなどに合わせるのも素敵です。

イギリス上流階級ではフロックコートなど着丈が長い服を普段から着ていました。そこにはシルクハットをかぶるのが常識でしたが、乗馬や狩猟などの激しい動きのときにかぶる帽子としてハンチング帽が生まれたと言われています。

キャスケット

キャスケットは、ハンチング帽の一種で、頭部が大きくて小さいつばのついた帽子です。

アメリカでは新聞売りがかぶっていたことから、ニュースボーイキャップなどとも呼ばれます。

もっともキャスケットらしいタイプは、エイトピース(8つはぎ)で、ヤマが何枚で構成されているかを表しています。エイトピースが立体的な膨らみのあるヤマになるのです。

ベレー帽

ベレー帽は、今や女性を中心に大人気の帽子で、老若男女を問わずかぶれる帽子です。

数々の漫画家も愛した帽子ということから、アーティストがかぶるというイメージもあります。帽子は室内では脱ぐものではありますが、漫画家 手塚治虫は「ベレー帽は僕の顔の一部。」とベレー帽を脱がず、まさに顔と一体になった帽子のイメージがあります。

ベレー帽には、バスクベレーとブレトンベレーという2つのタイプに分かれています。

主に今ベレー帽と呼ばれるものはバスクベレーです。

これは聖職者たちがかぶっていた角帽が、フランスとスペインの国境にあるバスク地方の農民に広まって普及したといわれています。

 

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