今日もはっと息を飲む帽子ストーリーを探して。ハットスタイル編集長の松はじめです。
帽子は、基本的には室内で脱ぐのがマナーです。
ところが、ほとんどいつでも脱がない!とポリシーを持っている方もいらっしゃるわけです。
例えば、手塚治虫先生といえばベレー帽が思い浮かびますよね?
手塚治虫エッセイ集 第7巻 にこんな風に書かれています。
ベレーはぼくの顔の一部である。めがねやかつらがそうであるように、ぼくはどんなVIPの前へ出ても絶対にとらない。また、どうしてもぬいで出ろといわれるようなところへは行かないことにしている。ところが、なんたることか!十五年前NHKテレビに出たとき、本番になって「ぬいでください!」ときたものだ。
「なぜですか」
「視聴者に礼を失するからです!」
憤懣やるかたなきままぬいだのだ。こんなことが、四、五回あった(いまはない)。
ぼくがベレーをぬぐのは、パスポート用の写真を撮るときと入院したとき、床屋へ行くとき、それにコンビニエンス・ストアに入る際だ。ベレーをかぶって手巻きずしやラーメンを買うと、店員が目を丸くしてベレーと顔とを眺め、「へえー、アトムさんも人並みのものを食べるんですか!」といったりする。情けない。だからベレーをとり、めがねもはずして入る。
最初にかぶったのは四十一年前。敬愛する横山隆一先生がかぶっていたので、マンガ家はかぶるものなのだと思って買った。それ以来、捨てたり買ったり、ほぼ百個を数える。肝心の横山先生は十数年前ぬいでしまわれた。ぼくは棺桶のなかでもかぶるつもりだ。海外に行ってもすぐ外国人に顔をおぼえられるから得である。
手塚治虫エッセイ集 第7巻 手塚治虫著より引用
手塚治虫先生といえば、ベレー帽とメガネはトレードマークです。
これはこのエッセイ集でも、めがねとベレーが僕のトレードマークです、と書かれています。
そもそも手塚治虫先生がベレー帽をかぶったきっかけが横山隆一先生で、横山先生がかぶっている姿から、マンガ家はかぶるものなのだ!とベレー帽を買ったというのも興味深いですが、ベレー帽=マンガ家・アーティストというイメージもありますよね。
そんな帽子ですが、ポリシーを持って脱がない!と決めていらしたのが手塚治虫先生。
エッセイ集に登場するNHKと手塚治虫先生、どちらが正しい・間違っている・良い・悪いではなく、一つのスタイルとして貫いているというのは素敵だなと感じます。
(しかし、よくぞ手塚治虫先生に、帽子をぬいでください!とお伝えできたものだなと思いますが・・)
また、周囲がそれをスタイルだなと受け止められるほどの人物であるからこそ、帽子を室内でかぶっていても許されるというのもあるんでしょうね。
室内でも堂々と帽子をかぶりこなせるようになりたいもの。
それなら松、帽子屋かマンガ家に転職しろ!というご意見ございましたらなるほどご尤もでございます、と私シャッポを脱ぐしかございません。
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